クオーツショック

日本が発信源・クオーツ腕時計の衝撃が世界を襲う

アストロン

セイコーは1969年、世界初のクオーツ腕時計(水晶発振式腕時計)である「アストロン」を発売しました。 定価は45万円と、なんと大衆車よりも高価な腕時計でした。 水晶は電圧をかけると一定のサイクルで振動するのですが、水晶発振器の信号を1秒間に1回の信号に変換して、 この信号をステッピングモーターに与える事で1秒ごとに秒針を回すのがクオーツ腕時計の原理となります。 この原理は第二次世界大戦よりも前に考案され、天文台などで使用される置き時計には使われていました。 それを腕時計に使えるサイズに小型化出来たのが「アストロン」となります。 それ以前の機械式や電池式腕時計は秒針が連続して滑らかに動くスウィープ運針でしたが、 クオーツ時計では省電力のために秒針が1秒刻みに動くステップ運針でした。

高性能化

セイコーのクォーツ腕時計登場により、スイスの高級機械式腕時計ブランドは壊滅的な打撃を受けました。 20世紀半ばまで全盛を誇ったアメリカの時計メーカーもほぼ全滅してしまいます。これをクォーツショックと言います。 その後もアラーム機能やストップウォッチ機能など腕時計の高機能化が進む一方で、クォーツ腕時計の低価格化が進みました。 それまで高級品だった腕時計が子供でも買うことのできる身近な商品へとなったのです。 1970年にはアメリカのハミルトンから世界初のデジタル腕時計が発売されます。この腕時計はLEDを用いて時刻を表示していました。 デジタル腕時計も発売当初は高価なものでしたが、液晶表示の導入と可動部品皆無な構造で大量生産に適するようになり、低価格化が進みます。 今ではアナログ式の腕時計よりも安く売られるようになりました。

機械式の復権

1980年代に入ると精度ではクオーツには及びませんが熟練工によって作りあげられた技術が再評価され、 スイス製の高級機械式腕時計の人気が復活してきました。 クオーツショックにより機械式時計のムーブメント製造は大きく変わり、機械式時計のメーカーやムーブメント製造を行う専門メーカーの再編、淘汰が進みます。 現在ではスイスの大手ムーブメントメーカーであるETA社が自動化設備で各パーツを量産したムーブメントが大きなシェアを占めています。 ですが各パーツの組立は人の手によって組立を行う必要があり、その部分の技術・仕上げにはメーカー間の姿勢や熱意に差があり、 同じETAムーブメントでもメーカーによっては精度や仕上げに差があります。 現在では手軽で高機能なクォーツ時計と、高級な嗜好品の機械式時計という位置づけで腕時計メーカーの棲み分けがされています。